自然目標の測り方×海洋保護区

2026-10-18

自然目標の測り方×海洋保護区 図版1

海洋保護区に指定されたあと、その中の漁業は減ったのか。2014〜2022年に指定された世界の海洋保護区861か所(世界の海洋保護区の面積のおよそ半分)について、漁船の位置情報(AIS)から推定した産業漁業の操業時間を、指定の前後で比べた論文が10月14日に出ました(Science Advances、フランス国立科学研究センターほか)。

結果は、保護の強さで分かれました。

・861か所全体では、58%(面積では66%)の区域で、指定のあとに区域の中の漁業(AISから推定した操業時間)が増えていた

・保護の強さが分かる517か所で、周辺の海の変化と比べても、はっきり減っていたのは漁業を一切認めない「全面保護」の区域だけだった

・全面保護や、それに次ぐ強い保護の区域は、もともと漁業の少ない海に置かれる傾向があった

最後の点を、著者は「残余の保全」と呼んでいます。漁業の少ない場所を選べば保護区の面積は早く増やせるけれど、減らすべき圧力はあまり減らない、という意味です。

著者は、こうなる背景に、世界目標の進み具合を測る指標が保護区の面積に偏ってきたことがあると見ています。面積という量を数える指標が、質よりも量を優先させてきた、という読みです。別の分野との対比もあります。炭素のオフセットでは、取り組みがなかった場合と比べた上乗せの効果を示すことが報告の要件になっているのに、保全の政策にはそれがない、と著者は書いています。そのうえで、面積や保護の強さに加えて、圧力がどれだけ減ったかを目標と報告に入れるよう提案しています。

ただし、著者は全面保護の生態的な効果を否定しているわけではありません。また、AISで見えるのは主に産業漁業で、沿岸の小規模な漁業や、AISを切った違法な操業は捉えきれないと断っています。

10月19日から、生物多様性条約のCOP17がアルメニアで開かれ、2030年に陸と海の30%を保全する目標を含む世界目標の、初めての進捗評価が行われます。30%を数えるのと同じくらい、その中で何が変わったかをどう測るかが問われていくのだと思います。自社の土地や調達先で自然の目標を立てる企業にとっても、面積や件数で目標を置いていないか、見直すきっかけになりそうです。

🔗 論文(Science Advances・2026年10月14日): https://doi.org/10.1126/sciadv.aed6878
🔗 COP17の開催(環境省・10月16日): https://www.env.go.jp/press/press_05695.html