森林×貿易のリスク/サプライチェーン

2026-10-18

森林×貿易のリスク/サプライチェーン 図版1

森の害虫や病原体が、木材の生産や、森の炭素の蓄えにとって、世界のどこで脅威になりうるのか。それを地図で示した論文が10月15日に公開されました(Nature Communications、蘭州大学・ケンブリッジ大学。編集前の先行公開版)。

著者が背景に挙げるのは、気候の変化で木が弱っていること、木材や苗木の貿易で有害生物が国境を越えていること、森の分断で広がりやすくなっていることです。それでも、どこの森がこうした脅威に弱いのかは世界規模ではよく分かっていない、というのが研究の出発点です。

森の有害生物(昆虫のほか、病原体や寄生植物も含む)1,875種の出現記録を世界地図にし、木材を生産している森、樹種の多い森、潜在的に炭素を多く蓄えうる森の地図と重ねました。有害生物の種類が多い場所と、こうした森が重なる場所を、著者は「潜在的なリスク地帯」と呼んでいます。

・その有害生物がつく木の、もともとの分布域の中で見つかった記録で見ると、リスク地帯は世界の森林面積の3.5%

・その木の、もともとの分布域の外で見つかった記録で見ると、1.6%

・リスク地帯の面積が大きかったのは米国、EU、オーストラリア、カナダ、中国、英国。英国は国の森林に占める割合も最大

どんな条件がリスク地帯と結びついているかを機械学習で調べると、木材を生産する森がリスク地帯になるかどうかを最もよく説明していたのは、木材の輸入量(FAOの国別の統計)でした。木のもともとの分布域の中で見つかった有害生物では、輸入が多いほどリスク地帯になりやすい関係で、著者はこれを、輸入した木材や梱包材に紛れて有害生物が入り、国内の木材生産地へ広がる経路を映したものと見ています。そのうえで、輸入木材の検査の強化、港や物流拠点での防疫、木材梱包材の処理の義務づけを挙げています。(木のもともとの分布域の外で見つかった有害生物では、輸入が多いほどリスク地帯になりやすい、という向きにはなっていませんでした。合う木が少ないと定着しにくいためだろう、という見方です。)

7月に紹介したTNFDの侵略的外来種の指標の討議文書は、企業が開示する中心の指標を、生態系がどうなったかという結果ではなく、外来種のリスクが高い活動のうち、適切な対策のもとで運用している割合に置くことを提案していました。例として挙がっていたのが、物流会社による木材梱包材の国際基準(ISPM 15)の活用です。今回の論文が挙げる輸入木材の検査や梱包材の処理は、ちょうど、企業が管理できるこの行動にあたります。

論文の地図はリスクが高い場所を示し、TNFDの指標は企業がどれだけ対策をとっているかを示す。この2つを重ねて見ると、森の有害生物への対応は、林業だけでなく、木材を輸入し運ぶ企業の開示の問題にもなっていくのだと思います。TNFDは、この指標の最終版を2026年10月に公表する予定としています。

🔗 論文(Nature Communications・2026年10月15日・先行公開版): https://doi.org/10.1038/s41467-026-78728-x
🔗 TNFD 侵略的外来種の指標に関する討議文書: https://tnfd.global/publication/discussion-paper-on-invasive-alien-species-ias-metrics/