資源循環×デジタル基盤の効果測定

2026-10-18

資源循環×デジタル基盤の効果測定 図版1

製品の素材や修理・リサイクルの情報をデジタルで引き継ぐ「デジタル製品パスポート(DPP)」は、資源の循環をどこまで進めるのか。ヒートポンプ、太陽光パネル、プリンター、パソコンなどのICT機器、電池について、欧州での効果を見積もった論文が出ました(Global Sustainability、ノルウェー大気研究所)。

ここでの循環率は、対象の製品群で、リサイクルと再整備(リファービッシュ)で回る割合です。

・対象の製品群の、EU27での2023年の推計循環率は14.8%

・DPPのシナリオでは45.0%(幅は28.6〜61.4%)

・節約できる資源は250万トン、金額で279億ユーロ。効果は太陽光パネルとリチウムイオン電池に集中

ただ、私が大事だと思ったのは数字そのものより、その根拠の扱い方です。著者が文献を体系的に探したところ、DPPのような情報共有の効果を数字で示していて条件を満たした研究は5本だけでした。著者は、基準を緩めて本数を増やすのではなく、厳密な定量の根拠が少ないこと自体が証拠の現状だと書き、だから幅を広くとっています。45%は「こうなる」という予測ではなく、条件がそろえばここまで、という上限の見積もりです。著者はこれを、導入後の実際の効果と比べるための物差しとして出しています。

著者は統計の側の限界も挙げています。国の統計は、作って使って捨てる直線型の経済を前提につくられていて、使用中の修理や長寿命化を捉えにくく、電池は廃電気電子機器の統計の分類にも入っていないそうです。

なお、ここでの循環率は、この論文が統計から組み立てた独自の定義で、14.8%と45.0%は同じ方法で計算した値です。論文は、2025年11月のCOP30で公表された企業向けの「Global Circularity Protocol(GCP)」には触れていません。GCPは、企業に入ってくる資源のうち再生材や再生可能な資源の割合と、出ていく製品や資源のうち回収できる・実際に回収された割合をまとめた「物質の循環率」を、共通の物差しとして示していて、DPPもそのデータを支える技術の1つに挙げています。製品群を国の統計で見る論文と、企業ごとに測るGCPでは、数字をそのまま比べることはできません。

それでも、こうした共通の物差しが使われ始めると、同じ条件で測った証拠が少しずつ積み上がっていくはずです。電池など優先される分野で導入が近づいているいま、パスポートの仕組みを整えるのと同じくらい、その効果を何で測るかを先に決めておくことが大事なのだと思います。

🔗 論文(Global Sustainability・2026年10月): https://doi.org/10.1017/sus.2026.10095