外来種×情報の通り道

2026-10-18

外来種×情報の通り道 図版1

9月の台風25号の大雨で堤防が決壊した千葉県の印旛沼の周辺で、特定外来生物の水草ナガエツルノゲイトウが流され、広がったおそれがあると報じられています(日本農業新聞10月3日、NHK10月13日)。茎や根の小さな断片からも再生する植物で、千葉県などが注意を呼びかけています。

ちょうどこの植物も対象に入った論文が、10月16日に公開されました。農業の雑草が県内で初めて見つかったとき、そのことはどれくらい報じられているのか。日本農業新聞の1999年1月1日から2024年1月1日までの記事2,280本で、外来種を中心とする雑草12種と病害虫10種の報道を比べた論文が出ました(『雑草研究』、千葉大学ほか。共著者に日本農業新聞の記者も入っています)。

・記事の数は、雑草が1種あたり平均30.3本、病害虫が192本。発生した都道府県の数や作物の作付面積を考慮しても、雑草の記事は少なかった

・県で初めて発生してから1年以内に記事になった割合(種ごとの平均)は、病害虫が81.0%、雑草は0.52%(初発の時期が分かった病害虫9種・雑草8種で集計)。雑草で初発生が記事になったのは、2022年に山梨県で見つかったナガエツルノゲイトウの1本だけだった

・病害虫の記事には、平均24.6%で植物防疫法にもとづく「特殊報」「注意報」「緊急防除」の言葉が入っていた。雑草は0%

著者が違いの背景として挙げるのが、法律の位置づけです。病害虫は植物防疫法のもとで、各県の病害虫防除所が巡回して調べ、初発生を特殊報などで知らせる仕組みがあります。雑草は2023年度の法改正まで、同法の「有害植物」に含まれていませんでした。

この集計期間の後、改正法のもとで2024年8月に福島県がナガエツルノゲイトウの県内初発生について雑草で初めての特殊報を出すと、日本農業新聞、地方紙、NHK、全国紙と報道が続いたそうです。著者は、侵入した雑草の発生を全国で共有する仕組みも日本に必要だと書いています。

侵入した生き物の早期発見は、市民や農家の目に頼るところが大きく、その目を開くのが報道です。自然の情報は、見つけただけでは社会に届きにくく、公的な発信の仕組みが、見つかった情報を広く届ける支えになっているのだと思います。環境情報を「つなぐ」仕組みの大切さを、新聞記事の数から見せてくれる研究でした。

🔗 論文(雑草研究 71(3)・2026年10月): https://doi.org/10.3719/weed.71.97
🔗 印旛沼周辺の流出の懸念(日本農業新聞・10月3日): https://www.agrinews.co.jp/news/index/410253