自然データ×国と企業の指標

企業が自然の状態を測る指標と、国が生物多様性の世界目標の進み具合を測る指標は、同じ物差しなのか。10月19日に始まった生物多様性条約のCOP17に、この2つを突き合わせた文書が情報文書(CBD/COP/17/INF/3、10月14日付)として出されました。
比べたのは、ネイチャーポジティブ・イニシアティブ(NPI)が10月13日に公表した「自然の状態の指標」4つです。企業や金融機関も使えるよう作られた指標で、文書は条約事務局とNPI事務局の指導のもとでまとめられています。結果は、指標によって分かれました。
・生態系の広さは、世界目標の主要指標(自然の生態系の広さ)と、ねらいも測り方も一致
・種の絶滅リスクは、主要指標のレッドリスト指数とほぼ一致
・生態系の状態と、種の個体数は、そもそも世界目標の側に主要指標がない
3つ目のうち、生態系の状態に主要指標がないのには理由があります。合意された確立した方法がないとして、締約国が置かなかったのだそうです。だから企業が細かい精度で集めた状態や個体数のデータは、将来の国の指標の土台になりうる、というのが文書の見立てです。
逆向きの差もあります。世界目標の側には、生態系がどれだけ崩壊に近いかを示す主要指標(IUCNの基準にもとづく「生態系のレッドリスト」)がありますが、NPIの4つにはそれに当たる指標がありません。文書はここを、残った最大の差だとしています。
ただし、文書が評価したのは物差しの整合までで、実際にデータをやり取りできるかの評価には国ごとの情報が要るため範囲外だ、と断っています。査読でも、企業や金融機関のデータは守秘やライセンスの決まりがあり、すべてを公開するのは現実的でない場合がある、という意見が出ていました。
私が注目したのは、企業の自然関連の開示を、国の進捗の把握につなぐ回路として設計しようとしている点です。企業が自社の開示のために集める自然のデータが、国や世界の目標の進み具合を測る材料にもなりうる。自然や気候の情報を意思決定に使える形に変える「環境情報化」でいえば、その「つなぐ」部分が、条約の会議に出された文書に書かれたのだと思います。あわせて、データを国の物差しにつなぐことで企業が何を得られるのか、データを提供する動機をどう設計するかも、考える必要があると思います。
🔗 CBD/COP/17/INF/3(2026年10月14日): https://www.cbd.int/doc/c/de8d/1336/3f6b3190ba64eb846e3d781a/cop-17-inf-03-en.pdf
🔗 NPIの発表(10月15日): https://www.naturepositive.org/news/latest-news/gbf-monitoring-framework-state-of-nature-metrics/