調達×生物多様性の優先順位/TNFD LEAP

ネイチャーポジティブに取り組むとき、自社の原料の産地のうち、どこから生物多様性への影響を減らす取り組みを始めるか。今あるデータで、その優先順位を付ける方法を示した論文が出ました(Business Strategy and the Environment、2026年10月)。米国の自然保護団体ザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)などが、世界120の地域から大麦を調達する多国籍の食品・飲料会社と組んで試したものです。
会社名は明かされていません。研究の資金はその会社が出していて、匿名を希望したと書かれています。どの地域から調達しているかは競争上の情報でもあるので、社名は伏せたまま、手法と知見を外に出す形にしたのかもしれません。
使ったのは、誰でも手に入る世界のデータです。畑ごとに、農地の利用の強さ、水の枯渇、土砂や栄養分の流出の可能性を重ね、手を打てば減らせる圧力がどこに多いかを点数にしました。そのうえで、危機にある生態系の残り具合や植物の種の多さと掛け合わせて、対策の機会を比べています。
・調達先の大麦畑の3分の2以上(68.3%)が、危機にある生態系の中にあった
・最も多かった圧力は、農地の利用の強さだった
・同じ点数から地域の順位を作ると、「面積あたり」で並べればインド北部・中部やメキシコ中部が上位に、「地域全体の量」(点数に作付面積を掛けた総量)で並べれば米国アイダホ州の南部・東部、ブラジル、ウルグアイが上位になった
2つの並べ方で、上位20地域の順位はほぼ一致しませんでした。著者は、順位の付け方は目的に合わせて選ぶ必要がある、と書いています。実際に次の段階へ進んだのはアイダホで、機会の大きさに加えて、会社の現地の体制とデータがそろっていたからでした。地域の専門家と、水の使い方の見直しや景観の多様化など7つの行動に絞り込んでいます。
ただし、世界規模の段階では対策の費用を入れておらず、費用は地域の段階で検討する作りです。気候変動や外来種、農薬の圧力は、使える世界のデータがないとして外しています。
私は、これをTNFDのLEAPアプローチでいう「L(自然との接点を特定する)」と、「E(自然への依存と影響を評価する)」のうち影響を評価する部分に通じる取り組みを、調達先の畑の単位で実際に回した一例として読みました。TNFDはLEAPを、開示に必要な調べを助けるものであると同時に、開示の義務があるかどうかに関係なく、組織が自然に関する課題を特定・評価するのに役立つものだと説明しています。どこにお金と人を先に回すかを決めることこそ、取り組みの中心なのだと思います。
🔗 論文(Business Strategy and the Environment・2026年10月): https://doi.org/10.1002/bse.71637
🔗 TNFD LEAPアプローチ(v2.0・2026年10月): https://tnfd.global/publication/additional-guidance-on-assessment-of-nature-related-issues-the-leap-approach/