森林×公共政策

森林減少の世界の進み具合を毎年まとめている「森林宣言評価(Forest Declaration Assessment)」の2026年版が、10月14日に公表されました。市民団体と研究者のグループによる独立した評価です。
2025年に森林減少で失われた森は700万ヘクタール余りで、前年から15%減りました。2018〜20年の基準期間以降で、最も大きな減り方です。それでも、2030年に森林減少を止める道筋からは70%外れている、というのが評価です。2021年以降、道筋どおりなら残っていたはずの森は、累計で1,070万ヘクタールにのぼるそうです。
農産物などの生産による森林減少が減ったのは、ブラジルのアマゾンで農地や牧草地の拡大が減ったことが大きく、連邦政府が衛星による監視で取り締まりを強めたことが効いた、と報告書は書いています。
一方で同じブラジルでは、森林破壊ゼロの自主的な取り決めである「アマゾン大豆モラトリアム」が揺らぎました。2006年に、環境団体や海外の買い手からの圧力を受けて穀物商社などが始めたもので、2008年7月より後に切り開かれたアマゾンの土地で育った大豆は買わない、という約束です。
揺らいだ発端は、法律との差です。ブラジルの法律では、アマゾンの農家は土地の80%を残せば、残りの20%は合法的に切り開けます。モラトリアムは、その合法な伐採まで認めません。大豆の生産者は、法律より厳しい約束が商売を妨げていると長く主張してきました。
・大豆の主産州のマットグロッソ州などが、取り決めに参加する企業から税の優遇(マットグロッソ州では公有地の利用も)を外す法律を作った
・2026年1月、穀物大手などが取り決めから離脱した
・8月、ブラジルの最高裁は、取り決めそのものは憲法に反しないと判断した。違法な取り決めや談合だという主張は退けられた。ただ、州の法律も維持した
つまり、約束を続けること自体は合法だけれど、続ける企業は州の税の優遇を失う、という状態です。報告書は、取り決めは法的には守られた一方で、離脱をもたらした経済的な圧力は残ったとして、自主的な約束は政策や政治の環境が変わると弱い、とまとめています。EUの森林破壊防止規則(EUDR)が2度延期されたように政策にももろさはあるものの、政策には個々の企業の意思だけでは外せない法的な最低ラインがある、という書き方です。
私は、企業が調達で掲げる森林破壊ゼロの約束を、自社の努力だけでなく、産地の税や取り締まりの仕組みとセットで見る必要がある、という話だと受け取りました。自社の調達方針がどれだけ効くかは、産地の公共政策とお金の向きに左右される。サプライチェーンの自然のリスクを測るとき、産地の制度の変化も、持っておくべき情報の1つなのだと思います。
🔗 森林宣言評価2026(政策決定者向け要約・PDF): https://forestdeclaration.org/wp-content/uploads/2026/10/2026SummaryforPolicymakers.pdf
🔗 最高裁の判断を伝えるAP通信の記事(2026年8月): https://apnews.com/article/brazil-amazon-rainforest-soy-moratorium-deforestation-4145415431832ff862b40e2ed1ab627e