AIインフラ×水×地域の納得

AIと水の話は、データセンターがどれだけ水を使うか、という量の話になりがちです。アラブ首長国連邦(UAE)の外務省が10月7日に発表した報告書「Crosscurrents」は、その先の話に1章を割いています。水と電力の使い方に地域の納得が得られるかどうかが、計画の停止や設計の変更につながっている、という話です。
報告書は、12月にアブダビで開かれる国連水会議の共催国として出したものです。
そのうえで報告書は、米国では2023年以降、約3,000億ドル分、200件を超えるデータセンターの計画が遅れるか中止になった、という集計を引いています。反対の理由は1つではなく、重なっています。
・農地を工業用に転用すること
・電力と水への負担
・騒音や交通、緑地が失われること
・税の優遇や雇用で、地域の負担が埋め合わされるのかという疑問
なかでも具体的なのが、報告書が紹介するチリの例です。
・Googleがサンティアゴに計画したデータセンターは、もともと地下水で冷やす設計だった
・住民と市が、気候変動のもとで帯水層にかかる負担が十分に評価されていないとして、環境許可に異議を申し立てた
・2024年2月、環境裁判所が許可を一部取り消し、気候変動を織り込んで水への影響を評価し直すよう命じた
・Googleは冷却を空冷に変えて、冷却に水を使わない設計にし、2026年に再開を探り始めた
報告書の提言には、デジタルの設備は数か月で建つが、電力と水の設備を広げるには10年以上かかるので、この時間差を許可の判断に織り込むべきだ、とあります。許可が出た後ではなく、立地を決める前に地域や水道事業者と話すことが、計画が予定どおり進むかを最もよく表す手がかりの1つだ、とも書いています。
私は、AIインフラの拡大は計算資源の話であると同時に、地域の水と電力をどう分け合うかという、社会インフラの話になってきていると思います。水が足りるかどうかだけでなく、その使い方を地域が受け入れるかどうかが、立地や工期を左右する条件になりつつある。日本は国全体の数字では水ストレスが低い側に入っていますが、報告書自身、国単位の数字なので国内の差は大きいと断っています。誘致を考える自治体も事業者も、早い段階で水の使い方を説明できるかが問われていくのかもしれません。
🔗 UAE外務省の報告書「Crosscurrents」(PDF): https://www.mofa.gov.ae/-/media/Feature/User-Guides/Crosscurrents-Report-Final.pdf
🔗 UAE外務省の発表(2026年10月7日): https://www.mofa.gov.ae/en/MediaHub/News/2026/10/7/uae-AI-Water-Energy-Nexus