気候変動×山の雪と水

2026-10-20

気候変動×山の雪と水 図版1

北アルプス・穂高岳の涸沢で、夏を越して秋まで残る雪渓(多年性雪渓)の面積を、1967年から2025年まで59年分つないだ論文が出ました(国立環境研究所などのチーム、日本雪氷学会誌「雪氷」。10月15日に国環研が発表)。

長い目で見た縮小の主な原因として強く示唆されたのは、雪がとける季節の気温の上昇でした。冬に降る雪の量の変化だけでは、説明がつかないようです。

・面積は年ごとの増減が大きいが、長い目で見ると1年あたり約947平方メートルずつ縮んでいる
・秋までに完全に消えた年は6回あり、うち5回は2016年以降(2016年、2022〜2025年)
・周辺の観測地点の降雪や積雪には、地点の間で共通する減少の傾向がなかった(低い標高の高山市などでは降雪が減っていた)
・一方、雪がとける季節の気温は、どの地点でもはっきり上がっていた。論文は、縮小の主な原因は、とける量の増大だと強く示唆されるとしている

2017年は雪がたくさんたまった年だったのに、翌年にはほぼ消え、そこから8年続けて消えかかった状態が続いているそうです。

論文は、山の雪渓を下流の水資源や観光資源としても重要だとしています。冬にどれだけ降ったかを見ているだけでは、この変化はつかめない、ということになりそうです。ただ、水の量への影響までは、この研究では測っていません。

この59年分の記録のつくられ方にも触れておきたいと思います。山岳地域には気象庁の観測網がなく、使われたのは林野庁や国土地理院の空中写真、現地の測量図、定点カメラ、衛星データ、個人の写真など8種類・106点でした。なかでも論文は、信州大学の学生サークルなどが1968年から19年間、同じ方法で続けた現地調査の記録と、それがきちんと保存されていたことが、長い期間の解析を可能にしたと書いています。50年以上前に学生たちが同じやり方で測り続け、残していた記録です。

山の雪の変化を地域の水や観光の判断に使うなら、冬にどれだけ積もるかと、とける季節の気温を、分けて追う必要があるのだと思います。

🔗 国立環境研究所の発表(2026年10月15日): https://www.nies.go.jp/pr/news-and-updates/2026/20261015-1.html
🔗 論文(雪氷 88巻5号): https://doi.org/10.5331/seppyo.88.5_381