自然×ヘルスケア×健康格差

緑道を整備すれば、健康格差は縮まるのでしょうか。
英ベルファストの大規模緑道の整備前後15年間を、3時点の住民調査で比較した研究が、プレプリント(査読前)として4月に公開されています。
調査は、整備前の2010/11年、完成直後の2017/18年、その6年後の2023/24年に、各回約1,000人の住民を対象に実施されました。同じ住民を追跡したのではなく、各時点の住民集団を比べた反復横断調査です。
15年間で見ると、身体活動・メンタルウェルビーイング・生活の質の3指標すべてで、所得による格差が広がっていました。
ただし、変化の時期は同じではありません。身体活動とメンタルウェルビーイングの格差は主に整備前から完成までの期間に広がり、完成後は概ね横ばい。一方、生活の質の格差は完成後に広がっていました。要因分解では、指標や時点によって、長期疾患と失業が観察された格差の約51〜76%を説明していました。
著者らの読みは「緑道が格差を広げた」ではありません。身体活動とメンタルウェルビーイングの格差が完成後に概ね横ばいだったことから、著者らは、緑道が格差拡大を緩めた可能性も指摘しています。ただし、著者ら自身も影響は限定的とし、因果関係までは確認できません。
格差の背景には、長期疾患や失業など、緑道だけでは直接対応できない要因があります。公平性を主目的に置かない、人口全体を対象とした介入は格差を縮めにくいという既存の知見とも整合する、というのが著者らの整理です。
緑の投資を平均値だけで評価していると、便益の分布や格差の変化を見落とすのかもしれません。
誰のための緑かを設計の最初に置き、格差そのものを測る指標を評価に組み込む。人と自然のあいだを測る仕事の、次の宿題のように感じました。
🔗 プレプリント(medRxiv)
https://www.medrxiv.org/content/10.64898/2026.04.08.26350389v1