耕作放棄×生物多様性


耕作をやめた田畑は、生物多様性にとって良いのか悪いのか。答えは地域によって逆になり、しかもその向きは、いまその土地にどんな鳥がいるかで予測できるそうです。
国立環境研究所、森林総合研究所、北海道大学の研究チームが8月27日に発表しました。論文は7月27日付で米国科学アカデミー紀要に掲載されています。
これは日本だけの話ではありませんでした。発表文によれば、耕作放棄による生物多様性への負の影響は、日本の里山のほか、イタリアやアルゼンチンの草原でも報告されています。逆に、カザフスタンやロシア、北海道では、かつて農地開発で追われた生きものが戻ってくるという正の影響が報告されてきました。この地域差は世界的に20年以上指摘されながら、統一的に説明する枠組みがなく、そのため生物多様性条約でも具体的に言及されないまま、扱いがあいまいだったそうです。
研究チームは、北海道から九州まで199か所で鳥類を調査し、世界各地の研究をメタ解析しました。鳥を、主に使う環境で5つのグループ(湿原性、草原性、森林性、裸地性、水辺性)に分けたところが要点です。
・スズメやヒバリのように農地そのものを好む裸地性・水辺性の鳥が多い地域では、耕作放棄で種数が減る
・湿原性や森林性の鳥が多い地域では、耕作放棄で増える
・繁殖期の九州では、けいはんや土水路が残る未圃場整備水田の種数が、耕作放棄地の約1.4倍、圃場整備水田の約1.8倍
・繁殖期の北海道では、低地の耕作放棄地の種数が、未圃場整備水田の約2.4倍
耕作放棄地では合計87種が確認され、国内で300個体ほどとされる亜種アカモズや、50個体を下回るとされるサンカノゴイも含まれていました。岡山県のある耕作放棄地では、越冬期に2ヘクタールあたりオオジュリンが73個体。
自然資本は、使いすぎだけでなく、関わる人がいなくなることでも失われる。そう書いたことがあります。今回の結果は、その先を示していると思いました。失われるとは限らず、地域によっては逆になる。しかも、どちらに転ぶかを先に見積もれる。人口減少を、保全の設計変数として扱えるということかもしれません。
🔗 プレスリリース(森林総合研究所)
https://www.ffpri.go.jp/press/2026/20260827/index.html
🔗 論文(米国科学アカデミー紀要)
https://doi.org/10.1073/pnas.2530120123