自然体験×教育


生物多様性の授業をどれだけ幅広く行うかは、教える人が子どもの頃に自然の中で何をしてきたかと結びついていた、という調査が9月3日に発表されました。
東京都立大学の研究チームが、八王子市の公立小中学校に勤める常勤教諭662名(小学校416名・中学校216名など)にアンケートを行い、構造方程式モデリング(複数の要因のつながり方を、一つのモデルとして統計的に確かめる手法)で解析しています。論文は8月29日に Biodiversity and Conservation に掲載されました。
面白いのは、同じ調査の中に、性質の違う2つの結果が並んでいることです。
ひとつは、教員自身が挙げた壁でした。
・他教科の準備などによる多忙(小中とも半数超)
・動植物や自然についての知識不足(小中とも約半数)
・教材や資料の不足(小学校で51.0%)
もうひとつは、統計に出た関連のほうです。幼少期に自然の中で多様な経験をしていた教員ほど、いまの自然との心理的なつながりが強く、そのつながりが強い教員ほど、14種類の実践項目のうち行っているものが多い。この構造が、小学校・中学校・理科・理科以外の4つのグループすべてで共通して出ています。
一方で年齢は、自然とのつながりとは正の関連を示したものの、このモデルでは実践項目数への直接の効果が有意ではありませんでした。
教材を作る、研修を増やす、時間を空ける。壁として挙がったものへの対処は、どれも制度の側でできます。この調査がもう一方で指しているのは、教える人がこれまで自然とどう関わってきたかという履歴のほうでした。研修に自然の中での体験そのものを取り入れてはどうか、と論文の意義の項に書かれているのは、そこだと思います。両方が要る、という話なのだと読みました。
企業の人材育成でも、似た形はありそうです。知識を足す研修で届くものと、届かないものがある。教育の研究からの当てはめではありますが、どちらなのかを見分けないまま研修だけを増やしても、たぶん動かない。
⚠ 八王子市という一つの地域を対象とした横断調査で、調査時期は2022年6〜7月です。著者らも全国への一般化には注意が必要とし、学校周辺の自然環境や緑地へのアクセス、学校・自治体の支援体制なども影響しうると書いています。幼少期のことは、大人になってからの記憶にもとづいています。
🔗 プレスリリース(東京都公立大学法人・2026年9月3日): https://kyodonewsprwire.jp/release/202609025180
🔗 論文: https://link.springer.com/article/10.1007/s10531-026-03462-1