自然体験の効果測定/評価基盤

自然に触れるプログラムは、規模が小さく、ばらばらのやり方で効果を測っていることが多い。だから効果を示すのが難しい。プログラム単体でも、分野全体としても。
8件ぶんを同じ調査票で束ねたら、単独では立てられなかった問いが立った、という報告がありました。学術誌 Ambio に9月3日付で出ています。
使ったのは、英 Natural England が作った「自然とのつながり」の評価ツールです。中身は3つ。
・参加者が参加の前と後に答える、標準化された調査票(「自分は自然の一部だと感じる」といった項目)
・プログラム側が、自分の取り組みの特徴を登録するフォーム
・回答が流れ込むダッシュボード。自分のプログラムが全体と比べてどうかを、その場で見られる
8つのプログラムで、参加前と参加後の両方に答えた人は75人。延べではなく実数です。
全体では、自然とのつながりの度合いが前後で上がっていました(β=.29、p<.001)。
そのうえで、プログラムを2つに分けて比べています。分け方は「自然とのつながりへの5つの経路」という枠組みを使ったかどうか。五感で触れる、感情が動く、美しさに気づく、意味を見いだす、思いやりを向ける、の5つです。自然の中で過ごす時間の長さだけでなく、関わり方の質のほうも設計する枠組みだと理解しました。
・使った4件は、はっきり上がった(β=.62、p<.001)
・使わなかった4件は、統計的に上がったとは言えなかった(β=.13、p=.104)
著者はきっちり釘を刺しています。このデータから因果は言えない、と。枠組みを使う団体はもともと熱心だったのかもしれないし、効いたのは「その枠組み」ではなく「何かの枠組みを使っていること」自体かもしれない。全部、著者が自分で書いていることです。
それでも、8件のどれか1つのデータだけでは、この問いは立てられませんでした。
共通の物差しで測れるようになると、どんな設計だと効きそうかの知見が貯まっていきます。ノウハウが流通して、次のプログラムがよくなる。見えにくい価値を測る仕事の効き目は、たぶんそこにあるのだと思います。
🔗 論文(Ambio・オープンアクセス):https://doi.org/10.1007/s13280-026-02472-1