環境と子どもの健康の長期パネル

環境と人の健康の関係を長く追いかけるには、同じ人たちを何年も追い続けるデータが要ります。日本には、それが一つあります。
9月1日に国立環境研究所が公表した内容によると、エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)は、2011年から2014年に全国で約10万組の親子を登録し、15年経ったいまも続いています。6歳時点の質問票の回収率は78.2%で、世界の大規模出生コホート調査と比べても高い水準だそうです。
集めているのは質問票だけではありません。さい帯血、血液、尿、毛髪、母乳、脱落乳歯。この15年で約600報の論文が出ています。
ただ、この公表文でいちばん誠実だと思ったのは、回収率の高さを書いた、その次の段落でした。
質問票に答えなかった人には、妊娠中の喫煙歴や朝食の欠食が多いといった特徴があった。妊娠中の尿中コチニン濃度も、未回答の人のほうが高い傾向があった。だから解析結果を解釈するときは、選択バイアスの可能性を考慮する必要がある、と自分たちで書いています。
追跡率が高いことと、代表性があることは、別のことなんだなと思いました。
私がこの先で気になっているのは、「環境」の中身のほうです。エコチル調査が積み上げてきたのは、化学物質へのばく露と子どもの健康の関係。では、緑の量や質、生態系の状態といった自然の側の変数を、こういう長期のパネルにどう接続していくのか。人と自然のあいだを因果で語るには、たぶんこれくらいの時間の物差しが要ります。
🔗 コホートプロファイルについて(国立環境研究所):https://www.nies.go.jp/pr/news-and-updates/2026/Press20260901.html