気候×高齢化×耐熱限界


1.5℃上昇の時点で耐えられない暑さ(耐熱限界の超過)にさらされる人の数が、これまでの推計の8.2倍になりました。気候の見通しが変わったからではありません。基準を、若い人の身体から、年齢ごとの身体に変えたからです。
The Lancet Planetary Healthに8月17日、年齢別の耐熱限界を使った世界推計が載りました。
これまでの世界推計は、健康な若い成人を対象にした実験室の値を、すべての年齢に当てはめていました。2023年に中年と高齢者の実験値が出そろったので、それを入れ直したのが今回です。
・1.5℃上昇の時点で、60歳以上の13.3億人のうち2.9億人(22%)が、年に180時間以上、限界を超える
・4℃上昇の時点の若い成人は、28億人のうち4.9億人(17.4%)
・人数では若い成人のほうが多く、割合では高齢者のほうが高い。しかも高齢者は1.5℃、若い成人は4℃の話です
・年齢別の値にすると、限界を超える人の数は1.5℃で8.2倍、4℃で2倍になる
・3℃上昇の時点で限界を超える人の数は、日本が世界10位の2,940万人
年180時間は、1日6時間の超過が1か月ぶん続く計算になります。
著者らは適応策の筆頭に、都市の緑を広げること、風の通りをよくすること、涼める場所をつくることを挙げています。
これは観測ではなく予測です。使った限界値は中緯度の、暑さに慣れていない人から得たもので、熱帯の人には厳しすぎる可能性があると著者自身が書いています。一方で、気候モデルの解像度では都市のヒートアイランドやインフォーマル居住区を捉えられないので、過小評価の方向にも振れます。
同じ気候予測でも、人の側の測り方を変えると、守るべき人の数と場所が変わる。翻訳の難しさは、たぶんここにあるのだろうと思っています。
🔗 論文(The Lancet Planetary Health)
https://doi.org/10.1016/j.lanplh.2026.101494