自然療法の効果測定の設計

森林浴や園芸療法がストレスを下げる効果は、どれくらい科学的に分かっているのか。まだ結果は出ていません。これから4か国で実施する試験の計画書(プロトコル)が、9月10日に Open Research Europe に公開されました(査読前)。
EUの研究プロジェクト GreenME の一環です。正式名称は「Advancing Greencare in Europe: An Integrated Multi-scalar Approach for the Expansion of Nature-based Therapies to Improve Mental Health Equity」という長い名前で、要は自然療法をメンタルヘルスの公平性のために広げていこうという事業です。庭・森・海ですでに自然療法を提供している団体(英国の Northern Roots、スウェーデンの Scandinavian Nature and Forest Therapy Institute など)と研究者が組んで、既存の現場を試験の対象にしています。本研究は HEurope project GreenME(Ref. 101084198)の助成を受け、英国分は UKRI の Horizon Europe Guarantee Extension(Ref. 10080427)で別途賄われています。
著者はこの問いへの現状を「頑健な証拠はまだ限られている」と書き、その理由も書いていました。自然を使った療法は、いまも小規模で、地域限定で、経済的に不安定で、閉じては開くを繰り返している。小規模で地域限定の取り組みが経済的に不安定なため、閉鎖と新規開設が頻繁に起きている、という意味だと思いました。証拠が「質が低い」とみなされるからだ。サンプルが小さい、対照群がない、介入の手順が不明確、検証された尺度を使っていない、短期しか見ていない。
証拠が弱いから続かず、続かないから証拠が貯まらない。この循環を断つために、7つの介入に共通の中核設計と尺度を置き、実施地ごとの調整は許容したうえで比べることにした、という文書です。
設計の骨子です。要は、誰に、いつ、何を測るかを7か所で共通にした、ということです。
・スペイン2、英国2、イタリア2、スウェーデン1(森林浴)の7介入。庭、森、海が舞台
・対象は中程度以上のストレスを自覚する成人(PSS-10で15点以上)
・介入群と通常ケア群に1対1で無作為に割り付け。1か所あたり98人(スウェーデンは178人)
・週1回120分を12週が基本。介入後、1か月後、3か月後に測る
・主要な評価はストレス尺度。副次でQOL(EQ-5D-5L)と主観的ウェルビーイング(英国統計局のONS-4)
・費用対効果(英国分を除く)と、薬の使用量や医療サービスの利用の変化まで記録する
・自然とのつながり(NCI)を、効き目の経路として測る
プロトコルによれば、2025年4月に始まり、2026年7月までに参加者を集め終える予定とされています。結果はまだありません。
私が面白いと思ったのは、英国の2か所では、自然を使った療法は患者が受けられる通常ケアの一部とみなされているため、対照群の人も介入後には同じ療法を受ける、という一文です。実施地によって「通常ケア」の中身が違う、という前提の上に、この試験は組まれています。
自然の効果を意思決定に使える形にするには、共通の物差しで測った結果が要る。自治体や医療機関が自然を使った療法を制度に乗せるかを判断するとき、この試験の測り方(対照群、共通の尺度、費用、薬の使用量)は、そのまま判断材料の型になると思っています。
🔗 プロトコル(Open Research Europe・CC BY):https://doi.org/10.12688/openreseurope.24389.1