NbSの価値の定量化/緑の質

2026-09-13

NbSの価値の定量化/緑の質 図版1
NbSの価値の定量化/緑の質 図版2

荒れた街路の写真に、手入れされた植栽を描き足して見せる。それだけで、見た人が答える「安全だと感じる度合い」が22.5%上がりました。同じ実験で試した「目隠し壁に窓を足す」「落書きを塗り消す」より大きい。ただし論文は、その緑が「よく手入れされ、刈り込まれた状態」で「日中の条件」だった、と但し書きしています。

Nature Cities に8月31日に公開された論文です。チリ大学・ケンブリッジ大学・LSEの研究チームが、チリの回答者2,028人に加工写真を無作為に見せ、18,150件の評価を集めました。

・目隠し壁に窓を足す:14.0%上昇
・落書きを塗り消す:13.6%上昇
・手入れされた植栽を組み込む:22.5%上昇

3つとも統計的に有意に効いています。違うのは大きさと、強度を上げたときの反応の形でした。窓は増やしすぎると5割の水準でむしろ下がり、落書き消しは25%で頭打ちになる。植栽だけが、増やすほどほぼ直線的に上がり続けていました。

写真を見せて聞いただけではないか、という疑問はあると思います。そのとおりで、これは静止画への反応であって、実際に街路を歩いた人の話ではありません。無作為に割り当てているので見せた画像と感じ方のあいだの因果は言えますが、言えるのはその範囲までです。測っているのも犯罪の発生率ではなく、体感的な安全のほうです。

そのうえで気になったのは、限界を書いた節でした。伸び放題の木や枯れた植栽だったら、とくに夜間だったら結果は違うかもしれない。照明と夜の条件は、すべての介入の効果を弱めるか、逆転させうる。著者はそう書いています。

つまりこの実験が測ったのは「緑の量」ではなく「ある状態の緑」なんだと思います。緑視率(視界に占める緑の割合)のような、量の指標だけで効果を語ると、この条件が落ちる。落ちたまま投資判断に乗せると、植えたあとの維持管理の予算が、計画から静かに消えていく気がします。

もうひとつ。3つの介入とも効果は男性のほうが大きく、その差は植栽でとくに顕著でした。著者は「物理的な環境の変更だけでは、女性が感じている不安には足りない」と結論しています。緑を足せば誰にとっても同じだけ安全になる、とは言えなかった。

自然の価値を意思決定に接続するとき、測るべきは面積だけではなくて、手入れの状態と、時間帯と、誰にとってか。そこまで含めて、初めて維持管理費まで入った判断ができるように思います。

🔗 論文(Nature Cities・オープンアクセス): https://doi.org/10.1038/s44284-026-00494-0