自然と経済価値・消費者行動

2026-09-14

自然と経済価値・消費者行動 図版1
自然と経済価値・消費者行動 図版2

自然を守っていると商品に書いてあったら、いくら多く払いますか。中国の研究チームが選択実験からその額を推定したところ、50グラムの紅茶で84.4元という数字が出ました。ただし同じ論文が、有機認証のラベルだけを単独で見せられても消費者はもう反応しない、とも書いています。

Frontiers in Sustainable Food Systems に8月24日に載った論文です。浙江清凉峰という国家級自然保護区の紅茶を題材に、南京・合肥・杭州の消費者610人へ選択実験をしました。「生態系保護の表示」への支払意思は50グラムあたり84.448元(95%信頼区間 70.5〜98.4)で、有機認証を上回っています。産地を名指しした自然保護の表示のほうが、認証より強かった。

面白いのはここから先でした。それぞれの表示の効果を単独で見たモデルでは、有機認証はプラスに働いていました。ところが、表示どうしの掛け合わせまで入れたモデルにすると、有機認証だけの効果は負か、有意でなくなります。テアフラビン(紅茶の色と味をつくる成分)の含有量が高いと、その負の効果が打ち消されていく。

倫理や環境のラベルは、単独では価格に乗らない。品質を示すものと組み合わさって初めて乗る、という形です。

日本でも同じ形が報告されています。明治大学商学部の加藤拓巳氏、フェアトレード・ラベル・ジャパン、日本電気の共同研究です。日本のコーヒー市場で、ブランド・商品品質・販売チャネルはロイヤルティに正の効果を持つのに、エシカル要因だけが負の効果を示した。そのうえで無作為化比較試験を行い、貧困問題を訴えるよりも、農園の労働条件の良さがもたらす品質を訴えるほうが、商品の魅力が高まることを示しています。

環境にいいものなら買いたいと答える人は多いのに、売り場では買わない。この乖離自体はずっと言われてきたことです。ただ、この2つの研究が扱っているのは乖離の存在ではなく、埋め方のほうでした。倫理や環境を、そのまま掲げるのではなく、顧客にとっての価値の言葉に翻訳する。

中国の論文は最後に、「この実験は、実際にいくら使ったかを追ったのではなく、いくら払うかを聞いたので、言葉と行動の間に乖離があり得る」と書いています。測れたのは、表示に対して「払うと答えた額」まで。そこから先を設計するのは、たぶん研究ではなく、商品と情報の作り方の仕事なんだろうと思います。

🔗 論文(Frontiers in Sustainable Food Systems・CC BY): https://doi.org/10.3389/fsufs.2026.1873963
🔗 明治大学のプレスリリース(エシカル消費における態度と行動の乖離): https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2023/mkmht000000rb73o.html