市民科学×場所への愛着/自然を使った社会的処方

2026-09-16

市民科学×場所への愛着/自然を使った社会的処方 図版1

ウクライナから避難してきて3か月の子どもたち17人(9〜14歳)が、オランダの街で4週間の市民科学プロジェクトに参加し、そのうち第2週と第3週に水辺のデータを集めた。その4週間で、街が「自分の場所」になっていく過程を追った研究が、9月12日に People and Nature に出ました(オープンアクセス、質的研究)。

活動は市民科学プロジェクト「Water Rangers Twente」。トゥエンテ大学の研究者が、人口約7万人の街アルメロで2022年夏に実施しました。子どもたちは4チームに分かれ、半日の調査を5回。透明度板で水の透明度を測り、採水して全国プロジェクトに郵送し、水生生物を網で調べ、ごみを拾う。同時に、その水辺がレクリエーションの場としてどう魅力的かも記録しました。

測ったのは水質だけではありません。参加前後に「知っているアルメロの地図」を描いてもらい、面接とグループ討議、観察記録を重ねた。いくつかの事前の地図には、知らない範囲を囲う「線」が引かれていたのに、事後の地図からその線が消え、湖や店や草地で紙が埋まった、という記述があります。

分析の枠組みは、環境心理学で使われてきた場所への愛着の枠組み(Raymond ら、2010年)を、Haywood ら(2021年)が自然系の市民科学向けに作り替えたもので、著者はそれを今回の文脈に合わせてさらに調整しています。個人・コミュニティ・自然環境の3次元で見て、3次元すべてで結びつきが強まったことが示唆された、としています。個人の次元では、道が分かる・場所の使い方が分かる、という知識の獲得と、有能感や自律性の回復。コミュニティの次元には、地元の若者が釣りをしたり、橋から川に飛び込んだりする姿を見る、という間接的な接触も含まれます。

私が持ち帰ったのは、著者の位置づけです。この種の市民科学を、脆弱な立場のコミュニティに向けた「自然を使った社会的処方」(自然との接触を増やし、人のつながりを強めて、長い目で心身の健康を支える支援策)として支援すべきだと書いています。データを集める活動が、生態系のモニタリングと、人の回復を、同じ時間で進める。17人の質的研究なので効果の大きさは言えませんが、自然のデータを「誰が集めるか」に、もう一つの価値がある設計だと思いました。

🔗 論文(People and Nature・オープンアクセス):https://doi.org/10.1002/pan3.70425