主観的WBの測り方

自然が人のウェルビーイングに効く、と言うとき、たいてい測られているのは「その場で気分が良くなったか」です。フィンランドで15人が自分の言葉で自然について書いた文章を分類した研究は、そこではないところを見ていました。
Ecosystems and People に2026年9月14日に載った論文です。人口10万人を超える3都市で、メンタルヘルス協会が提供する予防的なサービス(診断がなくても使えるもの)の利用者15人(23〜71歳、うち9人が年金生活者)に、「私と風景」という創作の場で自然について書いてもらい、その文章を分類しています。
分類の枠は、ユーダイモニア的ウェルビーイングの6つの次元です。その場の快・不快(ヘドニア)ではなく、意味のある生き方の側のウェルビーイングを指し、心理学者キャロル・リフが6つに整理しました。
のべ言及数の多かった順です。
・環境制御力(自分に合うように環境を整えられる感覚)70回・15人全員
・良い人間関係 68回・15人全員
・人生の目的 38回・14人
・自己受容 29回・11人
・自律性 19回・11人
・人格的成長 5回・5人
いちばん多かった環境制御力は、外にある機会を使いこなし、自分の価値観に合うように環境を整える力を指します。この研究で出てきたのは、近所の森を歩いて不安を和らげる、折れた枝を積み上げて近所の森を自分の秘密の公園にする、冷たい水に思い切って浸かって達成感を得る、といった話でした。自然を受け取るのではなく、自分の暮らしを自分で回すために使っている。そういう使い方が、いちばん多く語られていました。
意味のある場所は、たいてい近所でした。病院の中庭の小さな公園や、自宅の庭が挙がっています。「近所の森の折れた枝をきれいに積み上げていると、そこが自分の秘密の公園になる」という文章がありました。整備された公園を使う話ではなく、自分の手で場所に関わる話です。
そして、この論文が最後に書いていたことが気になりました。今後の研究は、人と自然の関係性を捉えられる科学の言葉を育てるべきだ。なぜなら「自然のウェルビーイング便益」という言い方そのものが、人と自然の関係を道具的に見すぎているかもしれないから、と。
自然の価値を測れる形にして意思決定につなぐ、というのが私の関心です。その翻訳が、翻訳する前にあったものを取りこぼしていないか。自分の仕事のほうに向けて問われた気がしました。
15人の質的な研究で、効果の大きさも因果も推定していません。著者らは、自然に焦点を当てた場での執筆なので肯定的に寄った可能性があること、北欧では社会経済的に不利な地域にも緑が多いため一般化に限界があることを挙げています。快の側と意味の側は相互に排他的ではない、とも書かれています。
🔗 論文(Ecosystems and People・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1080/26395916.2026.2725012