緑の質×乾燥地×その土地の知識/NbSの社会実装

2026-09-23

緑の質×乾燥地×その土地の知識/NbSの社会実装 図版1

乾燥した土地の都市で、水の使用を抑えた植栽はすでに実践されています。ただ、正式な計画の仕組みのなかでは、その多くが認識されていない。ナミビアの首都ウィントフックの調査は、その理由を人の側の期待に見ていました。

npj Urban Sustainability に2026年9月14日に載った論文です。規模も担い手も違う4つの事業(米国大使館の敷地、博物館協会 City Museum Association の敷地、内務省の敷地、コミュニティ菜園。いずれも2017年から2020年のあいだに始まっています)と、関係者16人への聞き取りから、乾燥地で自然を活かした解決策がどう理解され、どう使われているかを整理しています。

まず分かったのは、「自然を活かした解決策(NbS)」という言葉は多くの参加者になじみがない一方で、その原理にあたる実践は広く理解されていたことでした。

・在来の植物を植える

・水を節約する

・その土地の気候に合わせて設計する

既存の実践の多くが、その原理をすでに反映している、と論文は書いています。

障壁として挙がったもののうち、私が気になったのは制度や予算ではなく、見た目への期待のほうです。

・参加者は、NbSを温帯で水の豊かな地域で組み立てられた西洋の概念だと受け止めていた

・そのため、みずみずしい緑の景観が推奨され、ジャカランダのような、その地域の在来ではない樹木が持ち込まれる。生き残りにくく、水と維持費を大量に必要とする

・参加者はこれを、見た目はきれいだが生態的に浅い介入だと表現していた

・乾燥地の景観は不毛で生気がないという見方が住民にも意思決定者にも強く、水を多く使う芝生と外来種が好まれ続ける

・干ばつが2年続くと関心が高まるが、雨が降ると元の大きな芝生に戻る

ある参加者の言葉が引かれています。「茶色は生きている。茶色は生きものだ」。論文は推奨事項のひとつに、乾燥地の景観の価値を捉え直す枠組みとして、この言い方を挙げていました。

日本は水が豊かなので、そのまま当てはまる話ではありません。ただ、緑をどれだけ確保したかという量で評価する仕組みを持っているのは同じです。何を良い緑とするかは物差しの側に先に埋め込まれていて、その物差しが現場の選択を縛る。

生物多様性には、種の多様性、遺伝的な多様性、生態系の多様性という3つの層があります。乾燥地の景観をどう見るかという話は、3つ目の層に関わっているのだと思いました。

自然を活かした解決策、という言い方をすると、自然が先にあって、それを道具として持ち込むように聞こえます。でも順番は逆なのだろうと思っています。解きたい課題や作りたい価値のある場所が先にあって、その場所の生態系の特徴があって、そこからどうすればその特性に合った自然の活かし方ができるかを考える。ネイチャーポジティブを社会に実装していくときの勘どころのひとつは、たぶんこの順番のほうにあります。

4事例と16人への聞き取りによる質的な研究で、効果を測ったものではありません。掲載時点では未校正版です。

🔗 論文(npj Urban Sustainability・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1038/s42949-026-00468-0