職場の自然介入の証拠の地図/健康経営×第二の翻訳

2026-09-23

職場の自然介入の証拠の地図/健康経営×第二の翻訳 図版1

職場に自然を持ち込む取り組みは、ストレスや気分では測られています。会社が投資の判断に使う言葉で主に測った研究は、限られていました。

産業精神保健の2026年9月号に、労働者のメンタルヘルスに対する自然介入(Nature-Based Intervention)のスコーピングレビューが載りました。PubMed と医中誌Web を2026年2月まで検索し、327件から18件(英語12件・日本語6件)を選び、研究の所在と特徴を一覧にしたものです。

中身はこうでした。

・研究デザインは、無作為化比較試験が6件、観察研究が10件(うち対照群を持たない前後比較が8件)、質的研究が2件

・対象者は4人から340人で、中央値はおよそ38人。30人未満の研究が8件ある

・職場のなかで行う介入は、オフィス緑化、自然の要素を取り入れた建築デザイン(バイオフィリックデザイン)、VRの自然映像、園芸活動など

・職場の外で行う介入は、森林浴・森林療法、海辺の歩行、屋外でのオフィスワーク、ワーケーションなど

・測られたのは、心理(気分やストレスの尺度)、生理(唾液や毛髪のコルチゾール、自律神経の指標)、認知機能

そのうえで著者らは、職場のアウトカムを主要な評価項目にした研究は限定的だった、と書いています。ここでいう職場のアウトカムは、プレゼンティーイズム(体調が悪いまま働いている状態)、アブセンティーイズム(欠勤)、ワーク・エンゲイジメント(仕事への向き合い方の尺度)です。

もうひとつ、対象の職種が偏っていました。オフィス勤務者と医療従事者が多く、製造業や運輸業など身体労働を伴う職種の研究は1件も採択されていません。職場の自然は、この2つの職種に偏って研究されてきたということだと思います。

著者らの提案は、適切な対照条件を備えた研究に加えて、次の5つを併せて評価することでした。

・働く人と組織にとっての受け入れやすさ

・実施のしやすさ

・業務への影響

・続けられるか

・費用

効くかどうかを詰める前に、何を測るかがまだ揃っていない、と読めます。

自然の価値を、意思決定に使える情報へどう翻訳するか。費用と効果がいちばん厳しく問われる職場で、その翻訳が途中で止まっている。緑を入れる企画書に、何を測るかを先に書いておく。それだけでも次の一歩は変わりそうです。

著者ら自身が限界として、PsycINFO と CINAHL を検索していないこと(環境心理学や看護学の研究を取りこぼした可能性がある重要な限界、と書いています)、採択した文献の質の評価を行っていないことを挙げています。有効性について確定的な結論を出すものではありません。

🔗 論文(産業精神保健)
https://doi.org/10.57339/jjomh.34.3_304