自然×ヘルスケア/森林浴の証拠の厚み

2026-09-26

自然×ヘルスケア/森林浴の証拠の厚み 図版1

森林浴のストレス低減について、31本のレビューを束ねた研究の結論は強めでした。ただ、同じ論文の中で、束ねたうちの系統的レビュー22本の確信度を見ると、かなりばらけています。

Journal of Public Health に2026年9月に載った、ローマ・サピエンツァ大学のグループによるアンブレラレビュー(レビューを束ねたレビュー)です。要旨では、森で過ごす介入は、体の複数の仕組みにまたがる「強力な調整役」として働くことが示唆された、としています。血圧などの身体の指標やコルチゾールの低下、不安や抑うつの軽減が報告されています(血圧では有意でなかったメタ分析もあります)。

一方で、31本のうち系統的レビュー22本(残る9本は叙述的なレビューなど)について、レビューの方法から見た結論の確信度を評価した結果はこうでした。

・高:3本
・中:8本
・低:4本
・極めて低い:7本

著者ら自身も、参加者に森にいることを隠せないので期待の効果が混ざりうること、介入の長さや形式がばらばらで標準的な手順を決められないことを、限界として挙げています。

同じ9月、World Psychiatry にシカゴ大学の Marc Berman 氏が短い論考を書いていて、こちらはもっと慎重でした。自然との関わりを、有効性が確かめられた薬や心理療法と同列の治療とみなすのは早すぎる、として、足りないものを3つ挙げています。

・注意力や作業記憶の成績が良くなることが、うつや ADHD の症状が減ることにつながるのかは分かっていない
・実験の多くは、短い1回きりの接触しか試していない
・有効性が確かめられた治療と比べる研究が要る

2本を並べると、「森林浴は効くのか」という問いを少し変えたほうがよさそうだと思いました。何と比べて、何回で、どれくらい続くのか。ここがまだ空いているので、予防や医療の予算の判断に使うには、材料が足りないのだと思います。

森林浴のプログラムを入れる側にとっては、終わったあとに「効いたか」を聞くより、始める前に「何と比べるか」と「何回やるか」を決めておくほうが、次の判断に使えるデータが残りそうです。

🔗 アンブレラレビュー(Journal of Public Health・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1007/s10389-026-02897-8

🔗 Berman 氏の論考(World Psychiatry)
https://doi.org/10.1002/wps.70097