生きものとの関わり×心のウェルビーイングの測り方

2026-09-30

生きものとの関わり×心のウェルビーイングの測り方 図版1

鳥に餌をやって眺めている人たちに「この半年、餌やりと観察は心の状態に良い影響があったか」と聞くと、95%が「良い影響だった」と答えました。ところが同じ人たちの心のウェルビーイングを尺度で測ると、半年の前後でほとんど動いていませんでした。

Ambio に2026年9月に載った、米国とカナダの研究です。対象は、冬のあいだ自宅の餌台に来る鳥を数える市民参加の調査「Project FeederWatch」の参加者3,658人。2024年10月と2025年5月に、同じ人に同じ心のウェルビーイング尺度(7〜35点)で答えてもらっています。

・振り返りの質問で、餌やりと観察が良い影響だったと答えた人:95%(ほかの生活の出来事については55%)

・尺度の前後の差:平均0.4点(著者が意味のある変化の目安にしたのは3点)

・3点以上動いた人は、上がった531人、下がった324人。残る2,803人はほぼ変化なし

一方で、尺度が3点以上上がった人は、変化がなかった人より、振り返りで鳥の影響を高く評価していました。

自由記述(無作為に選んだ440件)の分類では、良い影響を挙げた答え305件のうち254件が「気持ちが明るくなる」「ストレスが減る」といった気持ちの面でした。ほかに、鳥や環境の役に立っている、自然とつながっている、夫婦で玄関先に座って鳥を見ながら話す時間になる、という答えもありました。逆に、10年見てきて鳥が減っていくのがつらい、という声もあります。

著者は、振り返りの自己申告には偏りがありうること、因果を確かめるには介入研究が要ることを書いています。対照群はなく、参加者は高齢・高学歴・高所得の人に偏っています。餌やりは鳥の病気を広げるなど鳥の側に害も出しうるので、一律に勧めるのは賢明でない、とも書いています。

私は、このずれを「効果がなかった」と読むより、「振り返りの実感と、前後2回の尺度は、別のものを測っているのかもしれない」と読むほうが実りがあると思いました。著者も、その場での測定と、体の反応を測る指標を組み合わせることを次の課題に挙げています。

自然とふれあう取り組みを評価する側にとっては、事前と事後の尺度だけで判断すると、参加者が「良かった」と言っている中身を取りこぼすかもしれません。どの変化を、どのタイミングで拾うか。評価の設計を先に決めておく話なのだと思います。

🔗 論文(Ambio・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1007/s13280-026-02471-2