緑の状態

2026-09-30

緑の状態 図版1

鳥の声が聞こえる場面で、人の気分が少し良い。そこまではこれまでの研究でも言われてきました。この研究が一歩進めたのは、声が「あるかないか」に加えて、声の「音の中身」まで測ったことです。

Environment International に2026年に載った、キングス・カレッジ・ロンドンなどのグループの研究です。スマホアプリ「Urban Mind」で、2020年3月〜2025年5月に2,088人が、その時の気分に答え、周りの音を8秒録音しました。記録は合わせて11,631回です。

・気分の得点(10〜50点)は、鳥の声が録れた場面のほうが、年齢などを調整して1.34点高い

・心の病気の診断歴があると答えた人では1.86点、ない人では1.00点(著者は、この違いは控えめなものとしています)

・音の特徴76種類を調べると、音の響き、音の高さの構成、高い音域の強さが、それぞれ時間とともにどれだけ揺れ動くかという3つの特徴が、気分と関連していた。著者はこれを合成して「Dynamic Timbre Index(DTI)」と名付けています。高いほど、録れた鳥の声の音が変化に富んでいる、という指数です

考察には、緑地の評価は緑の量や生物多様性の有無といった構造の指標に重きが置かれていて、感覚の質への考慮は限られている、という一文があります。

私は、環境のデータを扱う側から見て、ここがいちばん大事な点だと思いました。緑被率や種の数は地図や調査から出せます。人がその場でどう感じるかに近い「音の質」も、録音さえあれば機械で数値にできる、ということを示しているからです。

ただし観察研究で、因果は言えません。録音は8秒で、長い期間の曝露は見ていません。見た目など、音以外の要素も切り分けられていません。著者も、特定の種がウェルビーイングを直接高める証拠と読むべきではない、と書いています。1.34点という差も、10〜50点の尺度の中では小さな差だと私は受け止めています。

緑地を整備したり評価したりする側にとっては、「緑を何%増やしたか」に加えて「そこでどんな音がしているか」を記録しておくと、あとで人の側のデータと結びつけられる材料になりそうです。

🔗 論文(Environment International)
https://doi.org/10.1016/j.envint.2026.110397