消費の選択×自然との気持ちの近さ

地元の植物や鳥の名前をどれだけ挙げられるかから、生物多様性を守る責任を自分に感じるかどうかへ直接つながる経路は、統計のモデルに出てきませんでした。出てきたのは、自然を身近に感じるという気持ちの近さのほうでした。
Ecology and Society に2026年8月に載った、ドイツのライプニッツ農業景観研究センター(ZALF)の研究です。ザクセン州の農村地帯にある2つの町で、2024年7〜12月に路上で463人に聞いています。
・地元の植物と鳥の名前を思いつくだけ挙げてもらうと、平均で植物6.0、鳥10.3の分類(種より大まかな呼び名も含む)
・この地域の畑や草地に特徴的な植物は、1種あたり平均7%の人にしか挙げられなかった。農地に特徴的な鳥も、挙がったものでも10%の人
・それでも「自然との関係は自分の大事な一部だ」といった質問には、多くの人が高く答えた
・構造方程式モデル(想定した経路がデータに合うかを見る統計の方法)で見ると、自分への責任感への経路が出たのは気持ちの近さで、名前の知識からの経路は出なかった(知識と気持ちの近さには中程度の相関がある)。責任感が強い人ほど、地元・旬・有機の食べ物をよく買うと答えていた
著者は、知識から責任感への経路が出なかったことを「予想外だった」と書いています。
私は、環境の取り組みを伝えるときに「まず名前を覚えてもらう」ところから入りがちなことを思い出しました。少なくともこの研究の範囲では、名前の知識は、責任を感じるところまでの経路に乗っていませんでした。
ただ、1地域の横断調査で、因果は言えません。食べ物の選び方も、実際の購買記録ではなく「どれくらい買うか」の自己申告です。著者は、こうした食べ物の手に入りやすさや価格という壁があり、とくに所得の低い人には公共の政策が要る、とも書いています。
産地や生きものへの配慮を商品や売り場で伝える側にとっては、図鑑のような情報を増やすことと、その土地の自然を身近に感じてもらう場をつくることの、どちらに手間をかけるかを考える材料になりそうです。
🔗 論文(Ecology and Society・オープンアクセス)
https://doi.org/10.5751/ES-17472-310317