都市農地×住まいの判断

東京の農地の多い7地区で一戸建てを調べると、農地が南側にある家は、公園が南側にある家より、その側に窓を作っていない傾向がありました。差がはっきり出たのは、果樹園と市民農園に面した家です。
日本造園学会のランドスケープ論文集に載り、2026年9月にJ-STAGEで公開された、東京大学と立教大学の研究です。窓から緑が見えると生活満足度が高い、という海外の研究を出発点に、農地が「窓から見える緑」になっているかを、壁に窓があるかどうかという、建物に残った手がかりで調べています。
・調査地:葛飾・練馬・世田谷・西東京・国分寺・稲城・八王子の、農地の多い7地区。農地や公園に面した一戸建て1,805軒
・居室の窓がある割合:北側に農地がある家71%(公園は72%)、南側は92%(公園は97%)
・南側で、公園に面した家を1としたときの、窓があるオッズ比(1より小さいほど、公園に面した家と比べて窓があるオッズが低い):果樹0.103、市民農園0.161、野菜0.349(野菜は5%水準では有意でない)
・オッズ比は割合そのものではありません。南側の家で窓がある割合で見ると、公園97%に対して、果樹79%、市民農園86%でした
著者は理由として、果樹は防鳥ネットが視界をさえぎることや農薬の散布が比較的多いこと、市民農園は中高木がなく視線や話し声が通りやすいことを挙げています。ただし先行研究にもとづく推測で、住む人に聞いたわけではありません。実際に室内から農地が見えるかも確認しておらず、一時点の調査なので、家が建ったあとに作物が変わったり市民農園ができたりした場合も区別できません。
私は、健康やコミュニティづくりの観点から勧められている市民農園が、隣の家からは窓を向けられにくい側になっているかもしれない、という点に興味を持ちました。同じ「緑」でも、何が植わっていて、どう使われているかで、隣に住む人との関係が変わるということだと思います。
都市の農地を「緑の量」として数えるだけでなく、作物や使われ方まで記録しておくと、住まいの側の価値とつなげやすくなりそうです。隣の家の窓の向きは、それを確かめる手がかりの一つになるのだと思いました。
🔗 論文(J-STAGE)
https://doi.org/10.5632/jjla.19.1_21