生態系のタイプ×自然から受け取る価値の測り方

自然から受け取るもののうち、「観光」や「レクリエーション」は、山のふもとから山頂までのどの環境でも、いろいろな自然の要素と結びついて語られていました。一方で「学び」「スピリチュアルな体験」「回復の体験」は、少数の特定の地形や生きものとだけ結びついていました。
Sustainability Science に2026年9月に載った、ドイツのゼンケンベルク生物多様性・気候研究センターなどの研究です。キリマンジャロの登山者が投稿した位置情報つきのツイート1,255件を使っています。
方法はこうです。投稿から、人が自然から受け取ったもの(学び、達成感、回復、観光など15種類)と、一緒に書かれた自然の要素(氷河、滝、花、森、景観など127語)を拾います。そのうえで、同じ投稿に一緒に出てくる組み合わせを、サバンナから山頂の岩場まで6つの環境ごとに数えています。
・どの環境でも幅広い自然と結びつく:観光、レクリエーション、情動的な体験
・少数の特定の要素とだけ結びつく:学び、スピリチュアルな体験、回復の体験、達成感、象徴的な場所や強い印象を残す体験、人生観が変わる体験
・残りの6種類は、環境によって変わる
たとえば「学び」と「人生観が変わる体験」は、フルトヴェングラー氷河と強く結びついていました。投稿には「この氷河は自分が生きているうちに消えるだろう」という言葉もあります。著者は、こうした価値は特定の要素に頼っているので、その要素が失われることに弱い可能性があり、失われれば代わりがききにくいと書いています。
著者の提案は、価値の種類によって測り方を分けることです。幅広く結びつく価値は、特定の要素に頼っていないので、植生の被覆や自然へのアクセスのような粗い指標で追える。特定の要素に結びつく価値は、その要素ごとに追う指標が要る。粗い指標だけに頼ると、生態系が劣化していても行きやすい場所の価値を、過大に見積もるおそれがある、とも書いています。
ツイートに一緒に出てくる語の組み合わせなので、因果ではなく、知覚された関連です(著者)。主に北米・欧州からの登山者の投稿で、地元の人の見方を代表するものではありません。SNSには良い体験が書かれやすい偏りもあります。
私が思ったのは、緑の面積やアクセスで自然の価値を語るとき、その指標がよく拾えているのは、どこでも得られる価値のほうなのかもしれない、ということです。回復や学びのように特定の要素と結びついた価値は、粗い指標からはこぼれやすいのかもしれない。何が失われると何を受け取れなくなるのかを説明するには、価値の種類ごとに測る細かさを変える必要がある、という話だと受け取りました。
🔗 論文(Sustainability Science・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1007/s11625-026-01875-z