自然×ヘルスケア/グリーン処方の期待と評価

2026-10-07

自然×ヘルスケア/グリーン処方の期待と評価 図版1

英国では、医師などが自然の中での活動を「処方」するグリーン処方が広がり始めています。高齢化で医療への負担が増すなか、長く続く病気を抱える高齢者の健康を、費用対効果よく支える手段になりうると期待されているからです。ところが、50歳以上を対象にその効果を調べた研究を集めると、医療やケアの専門職から実際に処方されて参加した研究は、21本のうち4本だけでした。

BMC Medicine に2026年10月1日に載った、英国バーミンガム大学などの系統的レビューです。英国の公的な医療研究の助成機関(NIHR)が、研究の根拠をまとめる事業として資金を出しています。

まず、何が期待されているのか。論文の序論はこう整理しています。

・高齢者は社会的な孤立の影響を受けやすく、屋外の緑に出かける機会も減りやすい

・緑や水辺に頻繁に触れることは、糖尿病や心血管の病気、がん、不安や抑うつのリスクを下げうると報告されてきた

・自然の中の活動は人とのつながりを生み、孤独を減らしうる。体が動きにくい人には、室内に移して行うこともできる

英国では2024年に、自然を使った社会的処方の助成金100万ポンドが、NHS(国の医療制度)に関わる慈善団体に出ています。スコットランドの家庭医への調査では、8割がグリーン処方を知っていて、紹介する意思もあると答えていました。ただし、困窮した地域の患者が利用しやすいかには懸念も示していました。

では、効果の証拠はどうだったか。

・グリーン処方そのものの研究が少ないため、処方を通さずに地域で参加者を募った研究も(くじで群を分けた試験に限って)含め、計21本を集めた

・何かしらの改善を報告した研究は多いが、対照と比べてはっきり差が出たものは少ない。証拠の確信度は大半が「低」か「非常に低」

・生活の質や孤独、人とのつながりには良い兆しがある

著者は、効かないと言っているのではありません。医療から紹介されて来る人は、自分から参加する人と違うかもしれない。今ある証拠の多くは後者のもので、制度として回したときの効果は、まだほとんど測られていない、ということです。レビューに加わった利用者や提供者は、自分の経験からは良い影響を一貫して感じていて、スピリチュアルな面や心理社会的な面は、よく使われる指標では拾えていないとも話していたそうです。

著者の提案は、処方という仕組みをサービスとして評価することです。健康の変化だけでなく、費用対効果や医療資源の使われ方まで。政策の優先度と予算がついている施策だからこそ、と書いています。

期待されている「費用対効果よく支える」も、まだ十分に測られていません。紹介から参加、その後の健康の変化、費用、医療資源の使われ方までを同じ記録の上で追えるかどうかが、この施策を広げるかどうかの判断材料になるのだと思います。

🔗 論文(BMC Medicine・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1186/s12916-026-05194-z