水辺の整備×利用/量と使いやすさの効き方

2026-10-07

水辺の整備×利用/量と使いやすさの効き方 図版1

川の水辺に人がどれくらい来るかを、全国434か所のデータでモデルにかけると、水面の広さは、広いほどなだらかに利用を押し上げていました。一方で広場は、一定の広さを超えたところと、利用者が「使いやすい」と感じる水準を超えたところで、利用が急に上がっていました。整備の要素によって、効き方の形が違うということです。

土木研究所の研究チームが、河川技術論文集(2026年6月・J-STAGE 2026年9月30日公開)に出した論文です。国の河川空間利用実態調査と、利用者による評価(川の通信簿)がそろう434か所の、複数の調査日のデータを合わせた3,025サンプルを使っています。

方法を簡単に書きます。利用者数は地点ごとのばらつきが大きいので、人数そのものではなく5段階の順位に分け、その月の平年の気温、休日か平日か、周辺1km圏の人口、水面や広場の面積、利用者の評価といった変数から順位を当てる機械学習のモデル(ランダムフォレスト)をつくり、各変数を動かしたとき順位がどう変わるかを見ています。

・モデルが順位を当てるのに重く使っていたのは、気温と休日かどうか。気温は、その月の平年の気温が13〜17℃くらいのところで利用が最も多く、それより暑いと下がる

・周辺の人口は効くが、約2,000人を超えると伸びが緩やかになる

・水面の面積は、広いほどなだらかに利用が増える

・広場は、ごく小さい範囲を抜けると利用が急に上がる。「広場は使いやすいか」の評価(悪い1・普通2・良い3)は、約2.6を超えると利用が急に上がる

著者は、広場があること自体より、「使いやすい」とはっきり感じられる状態になって初めて利用が大きく伸びる、と読んでいます。

注意も書いておきます。これは予測モデルの中での関連で、因果ではありません。5段階をぴったり当てられたのは半分弱で、外れの多くは隣の段階でした。それと、評価をしているのはその場の利用者なので、人が多い場所ほど評価も高くなる、という逆向きの関係もありうると私は思います(論文はこの点に触れていません)。

私が面白いと思ったのは、量の指標と、使う人の感じ方の指標で、効き方の形が違うことです。面積はなだらかに効き、使いやすさは一定のところを超えると急に効く。整備を「どれだけ広げるか」だけで考えると、あと少しで「使いやすい」に届く場所を見落とすのかもしれません。すでにある全国調査のデータで、その手前にいる水辺を見つけられるなら、整備の順番を決める材料になりそうです。

🔗 論文(河川技術論文集・J-STAGE)
https://doi.org/10.11532/river.32.0_151