自然と住み続ける条件/離島の定住


東京都小笠原村の父島で、移住の理由に「自然環境を気に入ったため」を挙げた回答者は約4割でした。153人中60人で、複数回答のなかで最多です(移住理由は、生まれも育ちも小笠原村の5人を除く153人への質問です)。
では、住民の満足が高い項目と低い項目は何か。東京農業大学の研究チームが、父島の郵便が届く全1,218世帯に調査票を郵送し、QRコードからウェブで答えてもらった調査が、『食農と環境』に載り、2026年10月1日にJ-STAGEで公開されました。調査は2024年6月で、回答は158人(回収率13.0%)です。
調査では、暮らしの23項目について5段階で満足度を聞いています。以下の数字は、「特に満足」と「満足」と答えた人の合計の割合です。低いほど、満足している人が少ない項目です(残りには「どちらともいえない」なども含まれるので、不満の割合ではありません)。
・高い項目:海の美しさ 97.5%、自然が多く癒されること 90.5%、のんびりしていること 86.7%、海洋アクティビティ 84.2%、特徴的な生態系 75.3%
・真ん中あたり:島民同士の交流 60.2%、家賃 54.4%、収入 34.8%、就職先の見つけやすさ 34.8%
・低い項目:医療体制 20.9%、買い物の便利さ 14.5%、今の住宅の見つけやすさ 13.9%、家賃以外の物価 12.0%、緊急時の移動 10.8%、永住できる住宅の見つけやすさ 7.0%
上位5つは自然と島の雰囲気、下位6つは住まいと物価、買い物、医療と移動でした。仕事は真ん中あたりです。なお、子どもの教育や子育ての満足度は、23項目に入っていません。
23項目を因子分析(答え方に共通する背景を探す統計)にかけると、5つの因子にまとまりました。いちばん大きい因子(寄与率28.6%。満足度の答え方のばらつきのうち、その因子で説明できる割合)は、住宅と収入に関わる「生活基盤」です。海の美しさなど自然の項目は、別の「風土・環境」の因子(13.6%)に入っています。
著者は、この因子が最も大きいことから、住民は生活基盤を最も重要だと意識していると読み、家賃補助など住宅の支援を提案しています。
注意点もあります。回答は158人で、30〜50代が国勢調査より多く、10〜20代と70代以上は少ないと著者が書いています。父島だけの、1時点の調査です。
自然が人を呼ぶ理由になっていることと、そこで暮らし続けられる条件が整っていることは、別々に見る必要がありそうです。自然の価値を地域の定住の話に使うなら、自然の満足度を、住宅や医療、仕事の指標と同じ表に並べて見るところまで要るのだと思います。
🔗 論文(食農と環境 2026(41))
https://doi.org/10.57508/syokunokankyo.2026.41_51