景観の見方×観光まちづくり

2026-10-10

景観の見方×観光まちづくり 図版1

棚田の中から撮られた入賞写真と、外から撮られた入賞写真では、写っている棚田の部分と季節が違う。長野県千曲市(ちくまし)の姨捨(おばすて)棚田の観光写真コンテストで、入賞した169点を読み解いた研究です。『観光研究』37巻2号(2026年3月号)で、J-STAGEでは2026年10月1日に公開されました。

著者は、2006〜2022年度の入賞作を、撮影場所の9か所ごとに、何を、いつ、どの角度と距離から撮ったかに分けて整理しています。

・棚田の中の地点(A〜G):近くから、水面や稲、農作業者を撮った作品が多い。時期は地点によって、田植え期、収穫期の稲干し(いなぼし)、夜の月やライトアップ、冬の積雪と分かれる

・姨捨駅付近(H):中くらいの距離から、収穫期や冬の棚田を、駅や電車、街と一緒に撮っている

・長楽寺付近(I):中くらいの距離から、冬の棚田を、祠(ほこら)や積雪と一緒に撮っている

全体では、棚田の区画が4枚以上写る作品が94.1%(159点)、見下ろす角度が94.1%でした。

著者の整理では、棚田の中は近くで見られる反面、全体を見渡すのが難しく、外は全体を見渡せる反面、細部が見えません。いまの姨捨棚田の情報発信は、外からの見え方に偏っていて、中への誘導は十分ではないと書いています。棚田の中の見どころの調査、回遊ルート、マップの整備を挙げています。

ただし、対象は審査で選ばれた入賞作169点です。訪れた人全体の見方を測ったものではありません。気持ちや健康も測っていません。

写真という記録から、景観のどこが、いつ撮られているかを取り出す方法は、景観の価値を読むやり方として面白いと思いました。入賞作という偏りをどう外すかが、次の課題だと思います。

🔗 論文(観光研究 37(2))
https://doi.org/10.18979/jitr.37.2_19