海の生きものの分布×住民の認識のずれ

2026-10-14

海の生きものの分布×住民の認識のずれ 図版1

気候変動で、海の生きものの分布が変わりつつあります。その変化に地元の人が気づくには、まず今ある海の資源を知っている必要があるはずです。では、住む人は今ある資源をどれくらい知っているのか。東京大学と国立環境研究所の研究者が、日本地理学会の2026年秋季大会で、全国規模の突き合わせの結果を発表しています(発表要旨はJ-STAGEで2026年9月30日に公開)。

方法は、2つのデータを重ねるものです。

・住民の認識:2025年2月、海のある39都道府県の住民2,000人へのWebアンケート
・実際の分布:サンゴ、海藻(大型藻類)、漁港と漁獲、海水浴場や水族館などの施設のデータ

これを住民の住む地域ごとに照らし合わせ、「あるのに認識していない」「ないのにあると思っている」といったずれを分類しています。

要旨によると、主なずれは「実際にはあるのに認識されていない」ほうでした。「ないのにあると思っている」ほうより、こちらが強く出ていたそうです。とくに海藻・魚類・ダイビングショップで、分布と認識のずれが大きかったと書かれています。

ただし、1ページの発表要旨です。表には項目ごとの割合と、ずれの大きさや向きを表す指標が載っていますが、どんな人がどの項目を知らなかったのかや、分析の細かい手順までは、ここからは分かりません。環境の変化そのものへの認識の結果も、要旨にはまだ書かれていません。

私がこの研究で大事だと思うのは、変化に気づいてもらう前に、「いま何があるか」が共有されていないかもしれない、という点です。要旨の冒頭でも、サンゴの分布の北上や大型藻類の衰退が報告されていると触れています。こうした変化は、もともとそこにあると知っている人にしか、変化として見えないはずです。生きものの分布データと住民の認識を同じ地図に重ねるやり方は、地域の自然の情報を住む人と共有するときに、どこから始めればいいかを見つける道具になるのではないかと思っています。

🔗 発表要旨(日本地理学会発表要旨集・J-STAGE)
https://doi.org/10.14866/ajg.2026f.0_165