都市の野生生物×人の受け止め方

2026-10-17

都市の野生生物×人の受け止め方 図版1

都市に入ってくる野生生物を、人はどう受け止めるのか。その受け止め方は「どこで出会うか」で変わるのか。この問いを、ヘビの写真で確かめています。ヘビの写真を、草むらや木の上に写ったものと、路上や家の中に写ったものとで比べると、街や家の中のほうが、人は怖く、気持ち悪く感じる。それでいて「近づくかどうか」はほとんど変わらない。ハンガリーの成人500人に写真を評価してもらった研究が、Royal Society Open Science 13巻9号に2026年9月30日付で公開されています(公開日は書誌データベース Crossref の記録で、本文は校正段階の版で読みました)。ペーチ大学(ハンガリー)などの心理学の研究チームです。

背景には、都市に野生生物が入ってくる場面が増えていることがあります。人は都市を「人間の場所」と見なしがちで、そこにいる動物を「場違い」「侵入者」と感じやすい。危険の小さい種にも強い嫌悪や脅威の反応が起き、避ける行動や保全への支持の低さにつながることもあるそうです。ヘビへの反応の個人差を調べた研究は多いのに、「どこで出会うか」で評価が変わるかは、ほとんど調べられていませんでした。

方法はシンプルです。年齢・性別・学歴・地域などで全国の構成に合わせた500人が、別々のヘビの写真30枚(自然の中15枚、路上・室内・バルコニーなど15枚。種はできるだけそろえた)を見て、好ましさ・嫌な感じ・嫌悪・脅威・近づく気持ちを7段階で答えました。写真のヘビは、どれもハンガリーには自然分布しない種です。

結果は3つです。

・街や家の中の写真のほうが、好ましさが下がり、嫌な感じ・嫌悪・脅威が上がった(効果量は中程度)
・近づく気持ちは、場所でほとんど変わらなかった
・自然の中の写真では、自然とのつながりが強い人ほど好意的で、ヘビが怖い人ほど否定的だった。ところが街の中の写真では、こうした個人差の影響が弱まった

著者は、街の中という場面の印象が強いと、自然への親しみやヘビへの怖さといった一人ひとりの違いが表に出にくくなる、と書いています。そのうえで、自然の中ではその生きものの性質を伝え、街の中では「そこにいることはふつう」「よくある出会いと本当の危険は別」という文脈を伝えるのがよい、と提案しています。対策としては、伝え方に加えて、生きものが移動しやすい緑地や通り道の設計も挙げています。

限界もはっきりしています。写真への評価で、実際に出会ったときの行動ではありません。種や色を条件間で完全にはそろえられず、「街」には家の中と路上が混ざっています。ハンガリーの1つの文化での結果です。

私がこの研究を面白いと思ったのは、都市の緑を増やすと、生きものとの出会いも増えるからです。緑の量や質を測るのと同じように、その緑に来る生きものを住む人がどう受け止めるかも、計画の段階で考える変数になる。緑の計画と、住む人への伝え方を一緒に設計する余地があるのかもしれません。

🔗 論文(Royal Society Open Science・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1098/rsos.260765