公園の投資評価×人の行動データ/第二の翻訳

2026-10-17

公園の投資評価×人の行動データ/第二の翻訳 図版1

公園の価値を「近くに緑があるか」ではなく「実際に歩かれたか」で測り、土地代・建設費・維持費と同じ会計に並べると、元が取りやすいのは小さな公園で、大きな公園は歩く健康の便益だけでは元が取れる例が少ない。首都圏の4,139の公園を対象にした論文が、Nature Communications に2026年10月5日に早期公開されました。北京大学深圳校と東京大学などの研究チームです。

背景には、公園を「健康のための社会資本」として扱いたいのに、それを裏づける公園ごとの証拠が足りないという問題があります。これまでの研究の多くは、住まいの周りの緑の量や最寄りの公園までの距離で公園を表し、健康との関連を見てきました。著者はこれを、近くにあることを「使われること」の代わりとして暗に扱っている、と指摘しています。土地も維持費も限られるなかで、どの公園に投資するかを決めるには、実際の利用と費用を同じ物差しで比べる必要がある、という問いです。

測り方はこうです。

・2019年の匿名化されたスマホ位置情報(約32万人・公園訪問179万回)で、公園ごとの訪問と滞在時間をつかむ
・滞在時間の6割を歩いていると仮定して歩数に換算し、国土交通省のガイドライン(2017年)にもとづく「1歩0.04円」で、歩くことによる予防的な健康の便益に置き換える(医療費の減少を実測したものではない)
・公示地価と建設費・維持費の単価から費用を出し、割引率2%で何年で元が取れるかを計算する

結果の要点です。

・住まいから公園までの距離が倍になると、年間の便益は約16%下がる(この距離と便益の関係は約7kmまで保たれる)
・20年以内に元が取れるのは、街区公園(0.1〜0.25ha)の約16%
・地区公園の約8割、総合公園の約9割、広域公園のすべては、50年を超えるか回収できない

著者は、歩く健康の便益だけを数えた部分的な会計だと明記しています。心の健康、人のつながり、暑さの緩和といった便益は入っていません。大きな公園は、防災なども含めた別の便益を重ねて、長い期間で評価すべきだ、とも書いています。歩数は滞在時間からの推定で、1歩0.04円も日本のガイドラインの単価を置いたもので、医療費を実測したものではありません。

私がこの研究で大事だと思ったのは、結論の数字よりも、問いの置き方です。公園の評価を「あるか・近いか」から「どれだけ使われ、何を生んだか」に移している。自然の価値を健康と財政の言葉に訳すとき、どの便益を数えて、どれをまだ数えていないのかを明示した会計表があれば、部署をまたいだ予算の議論の土台になります。数えていない便益の欄をどう埋めていくかが、次の論点だと思っています。健康の便益に加えて、防災・減災や暑さの緩和も数えられるようにし、足し合わせていく。そうして初めて、自然の多面的な価値を経済の言葉で語れるようになり、ネイチャーポジティブな経済に近づくのだと思います。

🔗 論文(Nature Communications・オープンアクセス)
https://doi.org/10.1038/s41467-026-78106-7